巨大古墳測量調査ネットワーク型GPS活用事例

岡山大学文学部考古学研究室 様(協力:くらしき作陽大学、大阪市立大学など)

所在地
岡山市津島中一丁目1番1号
URL
http://www.okayama-u.ac.jp/

(2005年10月時点)

概要

古代吉備の栄華を示す全国第四位の巨大前方後円墳、造山古墳(つくりやまこふん、岡山市新庄下、国史跡)の測量調査においてネットワーク型RTKが活用されています。5世紀前半に築造された造山古墳は、墳長約360m。全国第4位。第3位の大阪府石津丘古墳(伝履中陵)にほぼ並ぶ規模で、調査可能な古墳としては日本最大です。吉備だけではなく古墳時代の研究として重要な意味をもっており、今回の調査はその実像を解明するもので注目を集めています。

造山古墳

作業概要

調査は3年計画で、今回は第一次調査。本格的な学術調査はこれまで行われておらず、基礎資料となる測量調査は高精度のデジタル測量で実施することにしました。古墳の外周および前方部、後円部上にネットワーク型RTKによって基準点を設置し、細部をトータルステーションで観測しています。細部はおよそ50cm間隔で測量していますので、最終的には20万点ぐらいになると思います。

取得したデータをもとに10㎝間隔の超精密等高線図や3次元のモデリング、さらにGISでの分析を行ないます。この超精密等高線図は、30年前に作成された航空測量図と比較するとかなり違っており、重要な古墳の形状が表現されています(下図参照)。また、従来方式である平板による等高線測量も実施しており、測量調査完了時にはデジタルとアナログの二種類の図面ができあがります。その比較もたいへん興味深いところです。

ネットワーク型RTK観測(前方部)
デジタル測量によって明らかになった形状
TSによる細部観測
従来の平板による測量

結果/導入メリット

測量データについては、GISによる分析管理などを前提に、世界座標系でのデータ取得を基準に考えています。以前から高精度のGPS測量を検討していましたが、2台以上の受信機が必要で費用面からも困難でした。今回、ネットワーク型RTKを評価し、古墳調査スタートとのタイミングもよく、採用を決定しました。精度については2cm以内で問題なく、標高についても平均をもちいることで満足いくものです。従来の三角点を重視する考え方もありますが、三角点自体の誤差、基準点を設置するまでの作業による誤差も想定されますので、今後はネットワーク型RTKが考古学調査においても普及していくのではないでしょうか。何といっても事前調査が時間的にも費用的にもかかりませんので、前日の準備ですぐに測量作業に入れたことはありがたかったです。

操作に関しても非常に簡単で戸惑うこともありませんでした。この造山古墳の研究では、古墳だけでなく周辺の水田地域もネットワーク型RTKで測量し、中世の土地利用について分析したいと考えています。
将来的には、今回の測量結果をレーダー探査や磁気探査など本格的な学術調査につなげていきたいと思っています。

ネットワーク型RTK観測(後円部)
ネットワーク型RTK観測(後円部)

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