用語解説

B

Beidou(北斗)

中華人民共和国が運用している衛星測位システム(GNSS)で、2012年に運用開始し、2025年3月現在45基の衛星が運用されています。

読み
ベイドゥ

BINEX(Binary Exchange Format)

GNSSデータ交換のためのバイナリ形式のデータフォーマットで、UNAVCO(測地学に関する米国の大学組織。現在はEarth Scope Consortium)とGNSS受信機メーカー等によって決められました。

読み
バイネックス

C

CLAS(Centimeter Level Augmentation System)

準天頂衛星システム(QZSS)の信号の1つであるL6D信号を使って送信される、電子基準点を使用して計算された補正情報により、センチメートル級の精度の測位を実現する方式です。測位は精密単独測位型RTK法(PPP-RTK)となり、受信機1台で観測ができますが、L6D信号の受信に対応した専用の受信機が必要です。また、利用範囲は日本国内に限られます。

読み
シーラス

CORS(Continuous Observation Reference Stations)

GNSS電波を連続観測するアンテナと受信機で構成される恒久的な設備です。日本では電子基準点(国土地理院)が該当します。詳しくは電子基準点を参照ください

読み
コーズまたはコアーズ

CPA(Closed Packet Access)

全国で提供しているau携帯電話のパケット通信網から「IP-VPNサービス」などのイントラネットサービスを経由して企業内のLAN等に接続するリモートアクセスサービスです。auパケット通信網とKDDIの「IP-VPNサービス」等でお客さま間を直接接続する閉域ネットワークにより、高いセキュリティを確保できます。

読み
シーパ

CSSR(Compact state space representation)

CLASで提供されているGNSS測位の補正情報のフォーマットです。精密な衛星軌道や時刻補正、衛星信号のバイアスといったグローバル補正情報のほかに、電離圏や対流圏といったローカル補正情報の送信にも対応しているため、精密単独測位型RTK法(PPP-RTK)を行うための必要な情報が提供できます。

読み
シーエスエスアール

D

DGNSS (Differential GNSS)

GNSS測位の相対測位方式の一種です。座標既知点である固定観測局で補正観測情報を算出し、携帯電話回線や無線を利用して移動観測局に送信します。移動局では送信されてくる補正観測情報と自局の観測情報を利用して即座に移動局における位置情報を求めることができます。測位精度はサブメートル程度で、主にナビゲーションシステムなどの精度向上用として利用されています。

読み
デファレンシャルGNSS

DOP(Dilution of Precision)

天空の衛星配置による測位精度の低下率を数値で表したもので、以下の種類があります。全て数値が大きくなるほど精度が低くなります

GDOP
幾何学的精度低下率
PDOP
位置精度低下率
TDOP
時刻精度低下率
HDOP
水平精度低下率
VDOP
垂直精度低下率
読み
ドップ

F

FIX解

RTK法等の測位計算において整数値アンビギュイティが定まった測位解(座標値)で、5mm~20mmの精度です。

FIX率

すべての測位解に対するFIX解の割合で、100%に近いほど安定した測位を表します。

FKP (Flächen Korrektur Parameter:ドイツ語)

用語解説:「面補正方式」を参照ください。

日本語表記
面補正パラメータ

FLOAT解

RTK法等の測位計算において整数値アンビギュイティが定まっていない測位解(座標値)で、10cm~数mの低精度となり、高精度測位には適していません。

G

Galileo

欧州(EU)が運営する衛星測位システム(GNSS)で、GPSやGLONASSと同様に全世界で利用が可能です。GPSやQZSSのL1信号と同一帯域であるE1信号に加えて、L5信号と同一帯域のE5信号では、E5aとE5bを1つに合成したAltBOC型と呼ばれる信号があり、マルチパスに強いという特徴があります。

読み
ガリレオ

GEONET

国土地理院が設置・運用しているシステムで、全国約1300か所の電子基準点と、データを収集解析する中央局を含めた観測システム全体を指し、高精度な測位網構築と地殻変動監視を目的としています。

読み
ジオネット

GGA,GPGGA

測位に関するデータを伝達するためにNMEA-0183で規定された通信プロトコルの一種で、正確には$GPGGAです。ジェノバでは、ユーザーから概略位置情報を取得する方法として、NMEA-0183で規定されている$GPGGAフォーマットを使用しています。

GIS(Geographic Information System)

位置に関する情報を持ったデータを管理・加工・視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術で、都市・環境・資源に関係する多様で膨大なデータを蓄積し、多角的な視点から速やかに統計処理を行い提供できるよう開発されたシステムです。

日本語表記
地理情報システム

GLONASS(Global Navigation Satellite System)

ロシアが運用する衛星測位システム(GNSS)で、GPSとは衛星軌道、使用周波数や信号形式等に違いがあるものの、GPSと同等に測位に用いられています。

GNSS(Global Navigation Satellite System)

米国GPSだけでなく各国の衛星測位システムの総称で、日本QZSS・ロシアGLONASS・欧州Galileo・中国BeiDou・インドNavICなどがあります。GPSが先行し、広く知られているため、報道等ではGNSSのことをGPSと称していることがあります。

読み
ジーエヌエスエス

GNSS受信機

GPSやGLONASSといった衛星測位システム(GNSS)の衛星からの電波を受信し、信号を解析して測位等を行う機器です。衛星からの電波を受信するアンテナと繋がっており、アンテナと一体化しているものもあります。身近なものではカーナビやスマートフォンに内蔵されています。

GNSS測位

GPSやGLONASSといった衛星測位システム(GNSS)を用いて地球上での位置を測定することです。衛星からの電波で、3次元的な位置を算出しています。

GPS(Global Positioning System)

アメリカが運用する衛星測位システム(GNSS)で、GPS衛星からの電波を受信することで地球上の位置を測定できます。

  • 全地球をカバーする31個(2025年3月時点)の衛星で構成される「宇宙部分」
  • 衛星の軌道の監視と発信電波の制御を行う「管制制御部分」
  • 航空機や船舶等の利用者の位置を決定するための「利用者部分」

の3つから構成されています。

I

IGS(International GNSS Service)

IAG(国際測地協会)の下に設立された国際協働事業で、全世界のGNSS測位維持のために、GNSS観測データを集約し、衛星軌道情報の精密暦などGNSSに関する様々な情報を一般に提供しています。日本は、複数のIGS点を運営しGNSSデータを提供しているほか、独自に算出した精密暦を提供しています。

読み
アイジーエス

ITRF(The International Terrestrial Reference Frame)

世界測地系の一つで、IERS(国際地球回転・基準系事業)が構築した国際地球基準座標系です。地球の重心を原点として、X軸は本初子午線と赤道との交点の方向、Y軸は東経90度の方向、Z軸を北極の方向とした3次元直交座標です。

J

J-View

ジェノバのリアルタイム配信サービス利用ユーザー向け現場観測支援アプリで、Webサイトからネットワーク型GNSSサービスを利用した観測状況をPCやスマートフォン等で確認ができるサービスです。

読み
ジェイビュー

M

MADOCA (Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)

JAXAが開発を進めてきた精密衛星軌道推定と時刻推定を行うソフトウェアで、精密単独測位(PPP)に必要な補正情報を生成します。電離圏や対流圏といったローカル補正情報の生成には対応していませんが、MADOCAで生成された補正情報の利用範囲は日本国内に限らず、海外でも対応可能です。

読み
マドカ

N

NavIC (Navigation with Indian Constellation)

インドが運用する衛星測位システム(GNSS)で、インド上空で長時間衛星が観測できるように衛星を配置して運用されています。かつてIRNSSと呼ばれていました。

読み
ナビック、ナブアイシー

NMEA-0183(National Marine Electronics Association-0183)

全世界の船舶で広く使用されているデータ伝送規格で、船舶用計器間の電気的インターフェイスと通信プロトコルについて規定しています。この通信プロトコルで、位置情報の表現が規定されており、GNSSではこの規格を採用しています。ジェノバでは、ユーザーから概略位置情報を取得する方法として、NMEA-0183で規定されている$GPGGAフォーマット等を使用しています。

Ntrip(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)

インターネット回線を使用したGNSSデータや補正データの通信プロトコルです。RTCM団体からver1.0,ver2.0の規格書が出版されています

読み
エヌトリップ

P

PPK(Post Processing Kinematic、後処理キネマティック方式)

GNSS受信機を設置した固定局と移動局の2台で同時観測したデータを後処理解析して移動局の座標を求める方式です。

読み
ピーピーケイ

PPP(Precise Point Positioning、精密単独測位)

GNSS衛星の軌道誤差・時計誤差を広域の複数固定局の観測データによって求めて補正データを作成・ユーザーに配信し、搬送波位相を用いた高精度な単独測位を行う方法です。

読み
ピーピーピー

Q

QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、みちびき)

用語解説:「準天頂衛星システム」を参照ください。

読み
キュージーエスエス

R

RINEX(The Receiver Independent Exchange Format)

GNSS受信機で受信したデータに関する共通データ書式(フォーマット)です。各受信機メーカー独自の規格等によらずに共通にデータを取り扱う目的で策定されました。

読み
ライネックス

RRS(Real Reference Station)

複数のGNSS固定局(電子基準点等)が存在していても、最寄りの固定局もしくは指定した固定局とユーザーの受信機との間で一対一のRTK法による測位を行うことです。ジェノバでは電子基準点型RTKの配信サービスを行っております。

読み
アールアールエス

RTCM (Radio Technical Commission For Maritime Services)

国際的な非営利の組織で、GNSSやRTK法のデータの標準伝送フォーマットを定めています。ネットワーク型RTK法では、解析センターから、このRTCMのフォーマットに基づいたデータが配信されます。ジェノバではVer3.2MSM5, Ver3 および Ver2.3の配信を行っています。

読み
アールティーシーエム

RTK法 (Real Time Kinematic)

GNSS測位において、搬送波位相を用いる相対測位方式の一種です。基準局と測位対象となる移動局で同時に観測を行い、基準局のデータを無線等で移動局に送り、2台の相対的な位置関係(基線ベクトル)を求めます。その基線ベクトルを基準局の設定座標に足すことで移動局の座標が求まります。数cmの精度で即座に位置が求められるため、測量からICT施工等に広く用いられています。

読み
リアルタイムキネマティック

S

SBAS(Space Based Augmentation System)

静止衛星からの補助信号を用いてGNSS測位の誤差を補正するシステムの総称で、主に航空機用として測位情報利用の安全性確保のために用いられています。日本では、2020年4月から準天頂衛星システムの静止軌道衛星によるL1Sb信号によって補正データの提供が行われています。

読み
エスバス

SLAS(Sub-meter Level Augmentation Syetem)

準天頂衛星システムの信号の1つであるL1S信号を用いてコード測位による衛星測位の誤差軽減のための補強情報(電離圏遅延や軌道などの関連情報)を送信し、サブメータ級の測位を実現する補強サービスです。利用範囲は日本国内に限られます。

読み
エスラス

SSR(state space representation)

GNSS測位において、各衛星の軌道・時計の状態や地域ごとの電離圏・対流圏の状態を表現したモデルであり、精密単独測位(PPP)等を行うために必要な補正情報です。CLASやMADOCAによる補正情報はこのSSRに分類され、PPPサービスに応じて様々なフォーマットが提案されています。

読み
エスエスアール

T

TTFF(Time to First Fix)

GNSS受信機を起動後、最初のFIX解が求まるまでの時間で、初期位置算出時間と呼ばれます。RTK法やネットワーク型RTK法では短く、PPP法では長くなります。

読み
ティーティーエフエフ

V

VRS(Virtual Reference Station)

用語解説:「仮想点方式」を参照ください

読み
ブイアールエス

W

WGS84(World Geodetic System 1984)

世界測地系の一つで、米国が構築しGPSで採用されている測地系です。かつてはITRF等の他の世界測地系との差が課題でしたが、精度向上によってお互いに近づいたため、現在では実用上の差はほとんどありません。

1周波、2周波、3周波

GPSから送信される信号は、周波数の異なるL1帯(1575.42MHz)とL2帯(1227.60MHz)があり、さらにL5帯(1176.45MHz)が送信される衛星が増えています。このようにGNSSでは、GLONASSをはじめその他の測位システムからも複数の周波数帯で信号が送信されています。測位に1つの周波数帯を使用することを1周波(主にL1帯)、2つの周波数帯を使用することを2周波、3つの周波数帯を使用することを3周波と言い、周波数帯の数が増えるほど、測位の性能が高まります。安定してRTK法による測位を行う場合は2周波以上の信号に対応した受信機が必要です。

一重位相差、二重位相差

RTK法等による相対測位方式では、高精度な測位を行うために、固定局と移動局の受信機間の時計誤差と受信機で観測されている衛星間の時計誤差を消去する必要があり、その方法として測位計算の過程で二重位相差が使用されます。二重位相差は、一重位相差を組み合わせることで行われ、一重位相差は、固定局と移動局で観測された同一衛星の搬送波位相の差分を計算することで求められます。これにより、衛星の時計誤差が消去されます。二重位相差では、異なる衛星間で得られた一重位相差の結果に対して差分を計算することで求められ、これにより、受信機の時計誤差が消去されます。

か行

仮想点方式(VRS、Virtual Reference Station)

ネットワーク型RTK法の一種として、最もよく使われています。数10km程度の間隔に配置されたGNSS固定観測局(電子基準点等)で、GNSS衛星から発せられる電波を常時受信・解析することにより、電離圏、対流圏の状態や衛星の軌道に関する情報を把握し、それらの誤差要因を考慮し、任意の場所のRTK法用固定観測局(仮想点)情報として移動観測局に提供するものです。ユーザーは固定局の設置管理が不要で、高精度で利便性の高い測位が行えます。

干渉測位方式

かつて、搬送波位相を用いた相対測位のことをこのように呼びました。

間接観測法

作業規程の準則で定められているGNSS受信機を用いたRTK法およびネットワーク型RTK法による測位の観測方法の一つです。ネットワーク型RTK法では、2点の移動局間で、2台同時観測または1台準同時観測を行います。得られた結果から、それぞれの点の三次元直交座標を求め、これらの差から2点間の基線ベクトルを間接的に求めるものです。

基線長

測位結果として得られる、固定局と移動局の点間距離です。

基線ベクトル解析

2台以上の受信機で受信したGNSS衛星の信号を用いて、点間の位置の差(基線ベクトル)を算出することです。

公共測量

測量に必要な費用の全部、または一部を国や公共団体が負担・補助して実施する測量です。測量法によって規定されており、建物等の局地的な測量や国土地理院が実施する基本測量は除かれます。

航法暦、精密暦

衛星測位計算には、衛星の正確な位置情報が必要となり、衛星から送信されている航法暦(放送暦=エフェメリス、アルマナック)と後処理用にIGS等が計算・公開する精密暦があります。精度は、アルマナック(大まか:数百m~数km)>エフェメリス(詳細:数m)>精密暦(高精度:数cm)です。

国家座標

その国の位置の基準です。日本では測量法第11条で定められた基準に準拠した緯度、経度、標高、平面直角座標、地心直交座標です。同じ位置の数値が複数存在すると社会的な混乱が生じてしまいますが、国家座標に準拠・整合した値に統一されていることで、誰もが安心して位置情報を利活用することが可能となっています。

さ行

作業規程の準則

測量法第34条の規定に基づき、公共測量における標準的な作業方法等を定め、その規格を統一するとともに、必要な精度を確保するもので、国土交通大臣によって定められています。

三角点

正確な位置を求める測量のために国土地理院が設置した位置の基準である測量標です。

ジオイド

ジオイドは「地球の重力による位置エネルギーが等しい面(等ポテンシャル面)」のうち「地球全体の平均海面と整合する面」で、日本は東京湾の平均海面を標高ゼロメートル=ジオイド面としています。
国土地理院によって、日本各地を高精度・高密度で重力値を観測する航空重力測量が実施され、精密重力ジオイド・モデルが整備されました。その成果が「ジオイド2024 日本とその周辺」で、2025年4月の標高成果改定によって運用開始となりました。

ジオイド高

楕円体面からジオイドまでの高さです。GNSS測量で標高を求めるには楕円体高からジオイド高を差し引きます。

準天頂衛星システム(QZSS)

日本が運営する衛星測位システム(GNSS)で、2025年度の打ち上げにより7機体制の測位システムとなり、QZSSだけで測位ができる予定です。GPSと互換性のある信号を送信し、GPSの補完(準天頂軌道の衛星が日本の天頂付近に長くとどまることで利用可能な衛星数の増加)や、補強(測位精度を高める信号の送信)の機能があります。QZSS・みちびきとも呼ばれます。

水準点

水準測量に使用される標高の基準点です。正確な高さの値を必要とする作業において水準測量の基準に使用されます。2025年4月の標高成果改定により、電子基準点の付属標も水準点として利用することができるようになりました。

スタティック測位方式

搬送波位相を用いた相対測位の1つであり、複数台の受信機で同時に長時間観測する方法です。高精度な測量等に用いられます。

整数値アンビギュイティ

GNSS測位において、衛星から受信機の間の電波の波の数(整数値)の決定に不確定性があることです。この値が正確に決まることをFIXといい、測位の正確性が確保されます。

世界測地系

地球上の位置(緯度・経度・高さ)を表す基準の1つであり、宇宙測地技術によって明らかとなった地球の正確な形状に近似させた準拠楕円体と地球の重心を原点とする地心直交座標系で構成され、国際的に定められた測地基準系です。日本の測地系も、2002年4月1日から旧来の日本測地系から世界測地系へ移行しており、現在のところ、GRS80楕円体とITRF(国際測地基準座標系)を組み合わせて求められた測地成果2024(JGD2024)が定められています。

セミ・ダイナミック補正

日本は固い岩盤である複数のプレートに囲まれており、このプレートが互いに動くことで複雑な地殻変動が日本列島全体で生じています。これにより、絶対座標(今期座標)と測地成果2024※で定められた成果座標(元期座標)が時間経過とともにずれていきます。この、地殻変動による座標のずれを補正する方法の1つとして、国土地理院から提供されているのがセミ・ダイナミック補正で、国土地理院のホームページ上で計算サイトと地殻変動補正パラメータファイルが公開されています。
※測地成果2011と測地成果2024の座標の水平位置は同一としています

相対測位

2台以上の受信機でGNSS観測を行い、衛星信号が受信機に到達する時間差を測定して2 点間の相対的な位置関係を算出します。このとき、観測や解析によって衛星・電離圏・対流圏に起因する共通誤差が低減され、高精度な測位結果が得られる利点があります。

測地成果2011(JGD2011)

日本国内の位置(緯度・経度・高さ)を表したかつての測地基準であり、2011年10月に公開されました。2002年4月に旧来の日本測地系から世界測地系に移行した際は測地成果2000(JGD2000)として定められていましたが、2011年東北地方太平洋沖地震による大きな地殻変動のため、新たに測地成果2011(JGD2011)が定められ、2025年3月末まで用いられました。
なお、現在最新の測地成果は「測地成果2024」(JGD2024)です。

測地成果2024(JGD2024)

日本国内の位置(緯度・経度・高さ)を表した現在の測地基準であり、2025年4月から運用開始されています。日本とその周辺の高精度ジオイド・モデルが整備されたことを機に標高成果改定(高さの基準になる日時の変更、ジオイド高の更新)が行われ、高さ方向の地殻変動が反映された測地成果2024が定められました。なお、水平方向については、測地成果2011から変更されていません。

た行

対流圏遅延

GNSS測位で使用される各衛星からの電波が、対流圏(地上から約16kmまでの大気の層)を通過した際に生じる伝搬遅延による誤差です。気温・気圧・水蒸気量などにより伝搬遅延量は変化するため、季節や気象状況によって誤差量も変化します。RTK法等による相対測位方式では、固定局と移動局間の基線ベクトルが短い場合、受信した電波が同じような大気条件の中を通過するため、観測値に含まれる共通の対流圏遅延誤差は消去されます。

楕円体高

GNSSから直接得られる高さで、地球を近似した幾何学的な楕円体面からの高さです。標高を得るには楕円体高からジオイド高を差し引きます。

単点観測法

ネットワーク型RTK法によって測点の座標を直接求める手法です。周囲に設置された基準点での観測は不要で、測点のみの観測で測位が行えます。

単独測位

1つの受信機で同時に4個以上の測位衛星から電波を受信し、各衛星からの距離を算出して測位する方法です。従来の狭義では、距離の算出には測位衛星から送信される搬送波に乗ったC/Aコード等を用い、スマホやカーナビ等でも利用され、測位精度は概ね数m程度です。搬送波位相を用いる精密単独測位(PPP)もあります。

直接観測法

作業規程の準則で定められているGNSS受信機を用いたRTK法およびネットワーク型RTK法による測位の観測方法の一つです。ネットワーク型RTK法では、1台の受信機を用いて移動局で観測を行い、移動局近傍に生成した仮想点と移動局の2点間の基線ベクトルを直接求めるものです。

電子基準点

国土地理院により全国約1300か所に設置されたGNSS連続観測点で、測量の基準や地震・火山噴火等の地殻変動の監視に使用されています。また データ配信機関を通じて位置情報サービス事業者に配信され、ネットワーク型RTK法等、リアルタイムに高精度の測位に活用されています。

電離圏遅延

GNSS測位で使用される各衛星からの電波が、電離圏(地上約50km~約1000kmまでの領域。電離層ともいう)を通過した際に生じる伝搬遅延による誤差であり、昼間と夜間の時間帯で変化するほか、太陽活動の影響を大きく受けます。電離圏遅延誤差は電波の周波数によって影響が異なるので、衛星から送信される2周波以上の電波を使用することで遅延量を推定し誤差を低減させることができます。また、対流圏遅延と同様に固定局と移動局間の基線ベクトルが短い場合、同じような条件の電離圏を電波が通過するため、観測値に含まれる共通の電離圏遅延誤差は消去されます。

トータルステーション(Total Station, TS)

角度を測定するトランシットの機能と距離を測定する測距儀の機能を一体化させ、角度と距離を同時に測定できる測量機器です。測点の位置を容易に求められるだけでなく、ターゲットを自動追尾する機能を持った機器もあります。

トランシット(Transit)

望遠鏡で視準した角度を計測する測量機器で、セオドライトや経緯儀と呼ばれます。三角測量や多角測量などで使用されます。

な行

日本測地系

地球上の位置(緯度・経度・高さ)を表す基準の1つで、日本の基準点(日本経緯度原点)の緯度経度を求め、高さの基準点(日本水準原点)を定め、緯度経度・高さを楕円体にあてはめることで定義されました。日本限定利用を前提としていたため、鉛直方向(重心の向き)は楕円体モデルの重心と一致しておらず、さらに楕円体モデルもベッセル楕円体を使用し、現在の世界測地系で使用しているGSR80楕円体とは異なります。なお現在日本国内での運用は、世界測地系が標準となっております。

ネットワーク型RTK法

複数のGNSS固定局(電子基準点等)の観測データを利用して、固定局と移動局の距離に関係なく、短距離基線のRTK法と同等の精度を実現する測位方式です。電子基準点網を利用することで、日本全国で高精度かつ利便性の高い測位ができます。この方式には仮想点方式(VRS)と面補正方式(FKP)があります。

は行

標高

東京湾平均海面を基準(標高0m)とした高さです。なお、トカラ列島以南と八丈島以南では離島ごとの平均海面が基準となっています。衛星測位で得られる高さは準拠楕円体面からの高さ(楕円体高)となるので、楕円体高からジオイド高を差し引くことで標高を求めます。

ま行

マウントポイント

インターネットを介したGNSS補正データの通信プロトコルであるNtripにおける各ストリーミングデータごとのIDです。マウントポイントごとに補正データの種類や配信方式が異なります。

マルチパス

GNSS衛星からの電波が受信機のアンテナ直接ではなく、周辺の建物、地面、架台等で反射して受信した信号をマルチパスと言います。マルチパスがあると測位誤差が発生するため、受信機や測位ソフトウェアなどで対応が必要です。

面補正方式

ネットワーク型RTK法の一種です。正確な位置が分かっている複数基準局(電子基準点など)の観測量から、サーバーにおいて電離圏等の状態空間モデルを生成し、観測者周辺の誤差量を面補正パラメータとして算出します。観測者は最寄りの基準局の面補正パラメータを用いて補正計算を行うことでセンチメートル精度の測位が可能なRTK法のひとつです。

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