GNSSとGEONETについて

GNSSについて

GNSSは[Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム]の総称です。地球を周回する衛星から電波信号を送信し、複数(同一システムで4機以上)の衛星からの信号を同時に受信することで、受信した位置を即座に決定できます。送信されている電波信号には、衛星の軌道情報と送信された時刻がわかる情報が含まれており、電波の発射時刻と受信機に到達した時刻の差から電波の伝搬時間を計算、光速度をかけて衛星-受信機間の距離を出すことで、衛星の位置を既知とした3辺測量の原理で受信点の3次元座標値を出します。

ただし、衛星に搭載されている時計は原子時計で精度が高いものの、受信機側の時計は水晶時計でそれなりに誤差があって、光速度を乗じると距離の誤差が大きくなるため、受信機時計の誤差を未知数として3次元座標+受信機時計誤差の4つの未知数を解くために4衛星以上の観測を必要とします。

送信されている電波信号は、測位(Positioning)、航法(Navigation)、時刻同期(Timing)に利用できる情報なので、PNT信号とも呼ばれます。

GNSSには米国のGPS、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国のBeiDou、日本の準天頂衛星システム(QZS)、インドのNAVIC(IRNSS)があります。最初の4つは全世界を対象とするシステムで、日本とインドの衛星系は対象地域が限定されています。

GNSSとGEONETについて

「GEONETとは(構成と機能)」

GEONETは国土地理院の運用するGNSS連続観測システム[GNSS Earth Observation Network]の愛称です。日本全国に展開された約1,300点のGNSS連続観測局(電子基準点)と、リアルタイムのデータ伝送網、中央制御・解析センターからなるシステムで、位置情報の基盤であり地殻変動監視網でもあります。

国土地理院によるGPS連続観測網は1994年から始まりました。その後、地震調査研究推進本部により地殻変動の基盤的観測網として位置づけられたことにより観測点数が順次増加し、2000年代には1200点を超えて、現在の約1300点の規模にまで拡充されています。

平均の観測点間距離は約20kmで、GPS、GLONASS、QZS、Galileoの測位衛星信号を1秒単位で取得して、リアルタイムにつくばの国土地理院本院に置かれた中央局に送信しています。

「GEONETの役割」

GEONETの役割としては「地殻変動監視」と「位置情報の基盤」の2つがあります。

(地殻変動監視)

全国の電子基準点で取得された観測データを毎日解析して「日々の座標値」を計算し、定常的な地殻変動から日本列島周辺のプレート運動や地殻歪の蓄積を明らかにしています。広域、かつ連続的に地殻変動を監視することで、ゆっくり滑り(Slow Slip)など、これまでに知られていなかったプレート間の非定常的現象を発見、解明することに貢献しました。また、地震に関連する断層の動きや、火山の活動に起因する地面の膨張や収縮を把握することで、そのメカニズムに関する重要な情報源となっています。

(位置情報の基盤)

GNSS測量では、座標が既知の基準点と新点の2点で観測を行い、相対測位を行いますが、GEONET観測局(電子基準点)を既知点とすることで、観測者は自前の受信機を1台用意して、電子基準点のデータは配信を受けることで測量が可能となります。GEONETのデータはリアルタイムに配信サービスが受けられるため、測量だけでなく土木・建設・農業などの現場で機械運転、制御にも利用されています。

衛星測位の世界ではPPP(Precise Point Positioning:精密単独測位)という基準局の座標値を参照しない手法も使われるようになっています。ただ、日本のように地殻変動の多い地域では衛星が準拠している座標系・座標値(今期座標)と、既存の地図が準拠している固定された座標系・座標(元期座標=国家座標)が時間経過とともにずれてしまうため、その間の補正・変換を行うデータが必要となります。GEONETでは電子基準点の日々の座標値を計算することにより、定期的にこの変換パラメータを更新することで位置情報の整合性確保に貢献しています。また、大地震などによって基準点の座標(成果値)を改訂する際にも、GEONETが骨格点の座標値を与えることで速やかに広域の基準点座標の更新が行えます。

※GEONETについては、国土地理院HP「GEONET GNSS連続観測システム」もご覧ください         URL:https://www.gsi.go.jp/eiseisokuchi/eiseisokuchi41012.html

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