位置の考え方(座標の考え方、高さの考え方)

基本的な定義

地球上の「位置」を表現するために一般的に用いられるのは「緯度、経度、高さ」です。

「緯度、経度、高さ」を定義するためには、「基準面」と基準となる「座標系」(Frame)を決めなくてはなりません。

地球の形を扁平な回転楕円体(球を南北方向に少し押しつぶした形)として近似して、中心を地球の重心に置き、短軸を自転軸と一致させたとき、長径方向の平面が「赤道面」で、楕円体表面と交差する線が「赤道」となります。ここが「緯度0度」、北極が「緯度+90度(北緯90度)」南極が「緯度-90度(南緯90度)」になります。楕円体面に対して法線を立て、法線と赤道面の交差する角が「緯度」になります。地表から天の北極(北極星方向)を見て地平面となす角度も「緯度」に一致します。(図参照)

短軸を含む面で楕円体表面と一致する弧を「子午線」と呼びます。子午線のうち、「経度0度」の起点となる子午線を「本初子午線」と呼びます。「グリニッジ子午線」という呼び名の方が通りが良いかもしれません。ある地点を通る子午線と本初子午線のなす角度が「経度」になります。東回りに「東経0度」から「東経180度」まで、西回りに「西経0度」から「西経180度」まで測ります。(図参照)

※『Webテキスト測地学』掲載図版に加筆
※出典:Webテキスト測地学 http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-1/index.html#7

「高さ」を定義する際は、楕円体面に法線を立てて、楕円体表面からの距離を「楕円体高」とすれば幾何学的には「緯度」「経度」「高さ」で3次元的な位置が決まります。

また、地球中心から「緯度0度」「経度0度」方向に座標軸(x軸)を取り、地球中心から「緯度0度」「経度+90度(東経90度)」方向に座標軸(y軸)を取り、地球中心から北極方向に座標軸(z軸)を取る、「3次元直交座標系」(X,Y,Z)で位置の表現をすることもできます。「緯度」「経度」「楕円体高」と三次元直交座標(X,Y,Z)の間では数学的な関係式で相互に変換が可能です。

「高さ」として「楕円体高」を用いると、日常的な感覚である「高いところから低いところへ水が流れる」と一致しないことも生じます。海面を「高さ」の基準とする「標高」は、平均海水面と一致する「ジオイド」面から、そこに立てた法線(厳密には重力の方向)に沿って測った距離です。この定義に基づけば、水は「高いところから低いところ」に流れます。ある地点においての「楕円体面」から「ジオイド」までの距離を「ジオイド高」と言います。「標高」と「楕円体高」と「ジオイド高」の間には

「標高」=「楕円体高」―「ジオイド高」という関係があります。

位置の基準、「国家座標」

「座標系」を定義した上で、位置を決定し「座標」で表現するためには、「基準」となる体系が必要です。「定義」から言えば「地球の中心」や「自転軸の方向」は明確ですが、「赤道面からの角度」「本初子午線からの角度」などを実務的に直接観測することは困難です。実際はその「定義」に基づいて観測・決定した複数の地点の「座標」をセットとして用意して、これを「基準」とすることで他の地点の「座標」を決定することが行われます。

このように実用的な「位置の基準」を整備・管理するのは、それぞれの国の地図測量機関が行うことが一般的です。この国ごとに定められた「位置の基準」およびそれに基づいて観測・決定された「座標値」は「国家座標」と呼ばれます。日本において「国家座標」を司っているのは国土地理院です。地図をはじめとして地理空間情報全般はこの「国家座標」に準拠して整備、アーカイブされています。日本の現在の「国家座標」を定めている体系が「日本測地系2011(JGD2011)」です。

「国家座標」の基準は、ある基準の日付「元期」に観測・決定した「座標値」になっています。これは、紙地図のように固定的な座標、位置関係の記録を使うことが、一般的な情報交換・共有の上では便利かつ混乱しないやり方としてメリットがあるからです。特に日本のようにプレート境界に位置している地域では、全地球的な「基準」でその時の「座標」を決めていくと、地殻変動によって「座標値」が時間的にどんどん変わってしまいます。このような観測した時点での「座標値」、「今期」の座標値を使うためには、その座標が「いつ観測・決定されたか」という時間の情報も必要となります。

衛星測位で「単独測位」あるいは「精密単独測位」の手法を使うと、全地球的な基準に基づいた「今期」の座標値が得られることになるので、「国家座標」に合わせるためには「地殻変動補正」が必要となります。

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