地殻変動補正について

地殻変動補正の必要性

日本は固い岩盤である複数のプレートに囲まれており、このプレートが互いに動くことで複雑な地殻変動が日本列島全体で生じています。

その変動量は平均的に年間0.2ppm(100kmで2cm)程度です。この変動による絶対位置の変化量はとても大きいものですが、測量で用いられる近隣の基準点同士(数km以内)は平行移動であって、お互いの相対位置はほぼ変化しません。しかし、電子基準点が測量に用いられるようになって、従来に比べて基準点間の距離が長くなり(電子基準点同士の距離は平均で15km程度)、基準点間の距離に比例する広域の地殻変動が無視できなくなりました。国家基準点や公共基準点の成果を定期的に変更すると、基準点だけでも全国には莫大な数があり、膨大な手間と費用が必要になり、現実的ではありません。解決策として、測量成果を改定せずに地殻変動による歪みの影響を補正するセミ・ダイナミック補正が導入されました。

こうした定常的で広域にわたる地殻変動に加えて、日本付近では大地震による地殻変動が発生します。2011年東北地方太平洋沖地震による地殻変動は非常に大きく、日本経緯度原点も移動するなど影響が大きいことから、東北地方を中心に元期(測量成果の基準となる過去の時点)がリセットされ、測地成果2000から測地成果2011に改定されました。さらに日本とその周辺の高精度ジオイド・モデルが整備されたことを機に標高成果改定(高さの基準になる日時の変更、ジオイド高の更新)が行われ、高さ方向の地殻変動が反映された測地成果2024となりました。
(水平方向については測地成果2011から変更なし)

こうした日本全国にわたる測地成果の改定とは別に、2003年十勝沖地震、2007年新潟県中越沖地震、2008年岩手・宮城内陸地震、2016年熊本地震、2024年能登半島地震、2024年日向灘地震等による地殻変動では、水平歪が2ppm(目安)を超える地域を特定して、個別に成果改定が行われています。

セミ・ダイナミック補正

セミ・ダイナミック補正の考え方は、「国家座標」(元期座標)を持っている基準点(与点)から測量を行ったとき、地殻変動の影響を「観測値」に補正して、新点の座標を求めるというものです。「観測値」は「与点」→「新点」の「今期」(現在)の座標差に相当する値ですが、これを「与点」→「新点」の「元期」(過去の基準時点)の座標差に相当する値に変換して、「新点」の「国家座標」(元期座標=測量成果)を求めます。

セミ・ダイナミック補正は補正パラメーターを使用して計算されます。このパラメーターは、元期から今期までの変動量を電子基準点の連続観測で得られた結果を基に補間計算を行い5km間隔の格子点の地殻変動補正量として求めたものです。パラメーターは毎年度更新され、国土地理院のホームページにパラメーターファイルとともに補間計算ソフトウェアが公開されていますので誰でも利用することができます。

当社地殻変動補正

ネットワーク型RTK-GNSS配信サービスを開始した当時はセンチメートル級精度を確保しつつ測地成果に整合させる仕組みがなく、国土地理院に相談させていただき、ご指導をいただいて独自システムとして開発し特許を取得しました。当社の地殻変動補正システムの特徴はネットワーク解析エンジンとは独立して動作しますので、多様な座標システムに同時に対応することができます。また、解析エンジンに左右されることなく改善・改良することができるのも、もう一つの特徴です。独自に開発し特許を取得した最初の地殻変動システムに加えて、測地成果に最も良く整合し理想的な結果が得られるよう改善し、結果を反映した新たなシステムも特許を取得しています。

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